土台の平原
このクエストで晴らす霧:「物価が上がる仕組みがわからない」というもやもや
全46枚・約14分
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
「また値上げか…」——レジで、ガソリンスタンドで、電気代の通知で。そんなため息をつく回数が、最近ふえていないでしょうか。
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その値段は、いったい誰が決めているのでしょう。お店の気まぐれ? どこかの偉い人の一存?——値段が動く仕組みを、私たちはあまり教わってきませんでした。
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でも、モノの値段は、たった一つのシンプルな力で動いています。それが見えると、「値上げ」のニュースは、ため息の種から「なるほど」に変わります。まずは、その力の正体から。
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モノの値段は、「買いたい人(需要)」と「売りたい人(供給)」の綱引きで決まります。買いたい力が強ければ上がり、売りたい力が強ければ下がる。原則は、それだけです。
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最近あなたが「高くなったな」と感じたモノを、一つ思い浮かべてください。その値上がりは、買いたい人がふえたから? それとも、売られる量が減ったから?——自分の予想を決めてから、次のグラフを動かしてみましょう。
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動かしてみると、原則が見えてきます。
需要(買いたい気持ち)が強まる
均衡価格は、上がりやすい。
供給(売られる量)がふえる
均衡価格は、下がりやすい。
2本の線が交わる「均衡点」
そこで、値段と取引量が落ち着く。
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市場には、この綱引きで値段が自動的に決まっていく仕組みが備わっています。
身のまわりでも、同じことが起きています。行列のできる人気店は、欲しい人が多いから強気の値づけができる(需要が強い)。豊作でとれすぎた野菜は、安く売られる(供給が多い)。
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値段が決まる仕組み
値段は、いつもこの綱の引き合いの、結び目です。
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ここまでは、一つの商品の話でした。では、世の中の「ほとんどのモノ」の値段が、いっせいに動いたら?
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インフレ
世の中のほとんどのモノの値段が、全体的に上がり続ける。
デフレ
世の中のほとんどのモノの値段が、全体的に下がり続ける。
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これは、ただモノが高い・安いという話ではありません。同じ1万円で買える量が変わる——つまり、お金そのものの価値が動く、という話です。
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「物価が上がる」と聞くと、悪いニュースに感じます。でも——インフレは、いつも悪者なのでしょうか?
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答えは、ノーです。むしろ緩やかなインフレは、経済が健康に育っているサインとされています。
経済は、少しずつ成長し続けている状態がいちばん健康的です。緩やかなインフレは、その成長をなめらかにする潤滑油の役割を果たします。
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緩やかなインフレには、こんな働きがあります。
消費や投資が動く
「先に買っておこう」という気持ちが働き、お金が回りやすくなる。
給料が上がりやすい
会社の売上が伸びやすく、賃金に回りやすくなる。
借金の負担が軽くなる
お金の価値が下がる分、ローンの実質的な重さが和らぐ。
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だから、日本やアメリカなど世界の主要な中央銀行は、物価の上がり方に目標をおいています。
日本銀行などが「物価安定の目標」として掲げる、物価上昇率
2%
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ただし、同じ「物価上昇」でも、中身が正反対の2種類があります。
需要がけん引するインフレ
みんなの「欲しい」が経済を引っ張る。モノが売れる→会社の利益がふえる→給料が上がる→さらに買う、の好循環。
コストが押し上げるインフレ
原材料費や輸送費など、作るコストの上昇が値段を押し上げる。
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政府や日銀が目指すのは、需要がけん引するインフレのほうです。コストが押し上げるインフレは、「欲しい」が強まったわけではないぶん、給料の伸びが物価に追いつくとは限らない。実質の賃金が目減りすれば、暮らしは苦しくなりやすい。
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では、いま日本で続いているインフレは、どちらでしょう。実は、原材料の多くを輸入に頼る日本では、円安(円の価値が下がって輸入品が高くなること)を通じたコスト側の押し上げが、大きな役割を果たしてきました。
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同じ「物価上昇」でも、給料の伸びが追いつくかどうかで、暮らしの実感は変わります。
(この円と海外のつながりは、投資編『為替と世界経済』でさらに詳しく扱います。)
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一見、うれしそうな「値下がり」。けれど、世の中全体で物価が下がり続けるデフレは、経済にとって最もやっかいな症状の一つです。
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「明日はもっと安くなるかも」と、みんなが買い控える。すると——「モノが売れない→会社の利益が減る→給料が下がる→ますます買わない」。この悪循環を、デフレスパイラルと呼びます。一度はまると、抜け出すのが難しい渦です。
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これは、教科書の中だけの話ではありません。1991年、バブルが崩壊し、土地や株といった資産の値段が大きく下がりました。ここから始まる停滞は、世界でも例を見ないほど長く続き、のちに「失われた30年」と呼ばれることになります。
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ただし、資産の値段が下がることと、モノの値段(消費者物価)が下がることは、同じではありません。
資産の値段(土地・株)
1991年
バブル崩壊。大きく下がった
モノの値段(消費者物価)
1999年
前年比がマイナスに転じた
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政府が「緩やかなデフレ」と初めて判断したのも、2001年3月でした。しかもその後ずっと続いたわけではなく、2006年7月から2009年10月のようにデフレと判断されなかった時期もあります。(出典:総務省統計局「消費者物価指数」、内閣府「平成24年度 年次経済財政報告」コラム1-3)
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その深刻さは、数字に残っています。
日経平均株価の、ピークからの下落率(最も安かった2009年)
約8割
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下がったのは、株価だけではありません。働く人の平均給与も、1997年の467万円をピークに長く低迷しました。
1997年(ピーク)
467万円
2009年
406万円台
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資産価格の下落から、物価のデフレへ。デフレスパイラルは、こんな順で回っていました。
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なぜ、これほど長引いたのでしょう。「物価は下がるもの」という思い込みが社会に染みつき(デフレ期待)、何もしなくてもお金の価値が上がるので、あえて使う・投じる理由が薄れる。金利をゼロ近くまで下げても効きにくくなる(ゼロ金利の壁)——いくつもの要因が、絡み合っていました。
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2022年ごろから、日本の物価は継続的にプラスへ転じました。2023年には約30年ぶりの高さとなる3〜4%台を記録。2024年2月には、日経平均株価が1989年末の史上最高値を更新します(2月22日の終値39,098円。40,000円台に乗ったのは3月4日)。
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株価の上昇はその後も続き、2026年6月25日の終値は7万2,366円をつけました(出典:日本経済新聞・日経平均株価)。賃金にも上昇の動きが広がり、長いデフレ基調からの転換が進んだ、との見方が広がっています。
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言葉だけでなく、実物のデータで確かめましょう。マイナス圏から4%台まで駆け上がり、そこからまた下りてくる——2020年1月から2026年6月までの動きが、一枚のグラフにあらわれています。
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ただし、ここに写っているのは2020年からのぶんだけです。左端に見えるマイナスは2020〜2022年のもので、さきほど見た1990年代からのデフレは、この窓の外にあります。
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グラフには3本の線があります。総合CPIはすべての品目、コアCPIは天候で振れやすい生鮮食品を除いたもの、コアコアCPIはさらにエネルギーも除いたものです。いちばん外側で揺れる要因を落としたコアコアが、物価の「基調(実力)」を見るのに使われます。
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最後にマイナスだった月は、系列によって違います。
総合
−0.4%
2021年8月
コア
−0.2%
2021年7月
コアコア
−0.7%
2022年3月
そこから上昇に転じ、2023年1月には総合が+4.3%でピークをつけました。
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その後は、ゆるやかに鈍化しています。2026年に入ると総合は1%台へ下り、春には3本ともその水準に。
総合(6月)
+1.6%
コア(6月)
+1.6%
コアコア(6月)
+1.7%
日本銀行が掲げる2%の目標に近いところまで、下りてきました。
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値段が決まる仕組み
値段は「綱引き」の結び目
モノの値段は「買いたい人」と「売りたい人」の綱引きで決まる。
強いほうへ動く
需要が強まれば上がり、供給がふえれば下がる。均衡点で落ち着く。
身のまわりのほとんどに働く
この綱引きは、身のまわりのほとんどの価格に働いている。
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インフレ・デフレの正体
動くのは、お金の価値
物価が動くとは、お金そのものの価値が動くということ。
緩やかなインフレは健康サイン
緩やかなインフレ(年2%程度)は経済の健康サイン。ただし需要けん引か、コスト押し上げかで意味が変わる。
デフレは抜け出しにくい
デフレスパイラルは抜け出しにくい。日本は約30年の停滞から、2022年以降プラスへ転じた。
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ニュースの「どちら」を考える
次に「値上げ」のニュースを見たら、需要が強いのか・コストが上がったのか、どちらだろうと考えてみる。
CPIの最新の数字を見にいく
総務省の消費者物価指数(CPI)の最新の数字を、一度だけ見にいってみる。
身のまわりで説明してみる
身のまわりで最近「安くなったモノ」と「高くなったモノ」を一つずつ挙げ、需給で説明してみる。
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この学びを使う前に
※ 本記事のシミュレーションや過去のデータは、将来の結果を保証するものではありません。
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お金のクエスト