株式の高峰
BS(貸借対照表)の読み方
このクエストで晴らす霧:「会社の安全性は、倒産のニュースが出るまでわからない」というもやもや
全49枚・約16分
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
ある朝、ニュースが流れます。「老舗メーカー、経営破綻」。街の声は口をそろえます——「え、あの会社が?」。
会社の安全性は、倒産のニュースが出るまでわからない。中の人にしか見えないのだから、仕方がない——そう感じたことはありませんか。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
そう感じるのは、まっとうな感覚です。お店の看板や商品は見えても、会社の「財布の中身」までは見えそうにない。よその家の貯金や借金が見えないのと、同じに思えます。
でも、ひとつ問いを立ててみましょう。上場会社の財布の中身は、本当に「見えない」のでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
答えは、ノーです。見えます。
上場会社は決算のたびに、「いま何を持っていて、いくら借りているか」の一覧表を公開しています。それが BS(貸借対照表・Balance Sheet)。倒産のニュースを待たなくても、会社の体力は自分の目で確かめられるのです。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
先に、この記事が「やらないこと」を約束します。
BSを読めても、次の株価の動きは当てられません。 それは誰にも、事前には分からないからです。ここで手に入れるのは、当てる技術ではなく、会社の体力を自分の目で測る読み方——倒れにくさを、ニュースより先に確かめる目です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
BSは、ある瞬間の「写真」
高峰の「PL(損益計算書)の読み方」を歩いた人もいるはずです。PLが1年間の稼ぎを追いかける動画だとすれば——BSは、決算日という1日を切り取った写真。その瞬間に、何を持ち、いくら借りているかの静止画です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
家庭にたとえるなら、「12月31日の時点で、貯金はいくら? 家や車は持っている? 住宅ローンはあと何万円?」という財産リストそのもの。1年でいくら稼いだかではなく、いまの持ち物と借金の残高を写します。
そしてこの写真には、世界共通の「決まった構図」があります。紙を縦線で区切った、左と右——それぞれに何が写っているのでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
答えはこうです。
左側は、集めたお金をどんな形で持っているか——現金、商品、工場。これを資産と呼びます。右側は、そのお金をどうやって集めてきたか——借りたのか、自前なのか。同じお金を「使いみち」と「集め方」の2つの角度から写した、1枚の写真です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
資産=負債+純資産
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
右側の「集め方」は2階建てです。負債=他人から集めた、返す義務のあるお金。純資産=返す必要のない、自前のお金。
そして左右の合計は必ずぴったり一致します。集めたお金は、必ず何かの形で存在しているからです。この釣り合い(バランス)が、Balance Sheetという名前の由来です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
3,000万円の家を買った家計で考えてみましょう。
家(資産3,000万円)=住宅ローン(負債2,400万円)+頭金(純資産600万円)。同じ3,000万円の家に住んでいても、頭金の厚さで家計の安心感はまるで違う——会社のBSも、まったく同じ構図です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
負債(他人資本)
銀行からの借入や社債など、他人から集めたお金。返す期限があり、利息もかかる。稼ぎが細った年でも、返済は待ってくれない。
純資産(自己資本)
株主が出したお金と、会社が稼いで蓄えたお金。返す期限がない。苦しい年に会社を支える土台になる。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
ここからは、架空の会社で写真を実際に読んでみます。ヤマセ製作所——架空の機械メーカーです(以下の数値はすべて説明のための架空例です)。
決算日の写真はこうでした。総資産1,000億円。右側の内訳は、負債600億円+純資産400億円。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
写真の左側——資産の部
まず左側、資産の部から。実物のBSには「売掛金」「棚卸資産」「有形固定資産」……と、十数個の科目がずらりと並びます。
全部の科目を覚えてからでないと、読み始められないのでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
答えは、ノーです。最初に覚えるのは、たった1本の線だけ。
資産は「1年以内に現金になるか」で2つに分かれます。1年以内に現金になる見込みのものが流動資産、長く使い続けるものが固定資産。この区切りは「ワン・イヤー・ルール」と呼ばれます。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
流動資産の主役は3つです。
現金・預金——そのまま使えるお金。売掛金——商品を先に渡し、代金は後で受け取る「ツケ」の権利。棚卸資産——倉庫で出番を待つ在庫。どれも、1年以内にお金へ姿を変える予定の持ち物です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
読み手は、この持ち物の「量」を気にします。
売掛金が多すぎる会社は、売上は立っているのに現金がまだ手元に来ていない。棚卸資産が積み上がる会社は、商品が売れ残っているのかもしれない。持ち物の中身には、商売の調子が透けて映ります。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
固定資産は、長く使う持ち物。3つの束で見ます。
有形固定資産——土地・建物・機械など、形のあるもの。無形固定資産——ソフトウェアや特許など、形のないもの。投資その他の資産——他社の株式や長期の貸付金。事業の「体つき」が表れる場所です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
無形の中に、ひとつ面白い住人がいます。のれん——他の会社を買収したとき、相手の純資産を上回って支払った差額です。
ブランド力や技術力への上乗せ分。ただし買収先の調子が崩れると、この価値を大きく切り下げる損失(減損)につながることがあります。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
建設仮勘定、契約資産、繰延税金資産——細かい科目は、まだまだあります。でも、それらは「必要になったら引く辞書」でかまいません。
まずは「1年の線」と主役の科目だけ。地図の全地名を暗記してから旅に出る人は、いないのですから。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
写真の右上——負債の部
次は右上、負債の部。ここにも同じ「1年の線」が走っていて、1年以内に返す・支払う流動負債(買掛金・短期借入金など)と、返済がその先の固定負債(長期借入金など)に分かれます。
そして負債は、「全部同じ借金」ではありません。性格で束ねると、3つの顔が見えてきます。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
- 商売のツケ——買掛金。仕入代金の後払いで、商売の信用で成り立つ
- 利息のつく借入——短期・長期の借入金や社債。まとめて「有利子負債」と呼ばれる
- 義務の予約——前受金や引当金。お金を借りたのではなく、果たすべき義務を負債として記録したもの
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
3つ目の「義務の予約」には、少し不思議な住人がいます。前受金——商品を渡す前に、お客さんから先に受け取ったお金です。
お金をもらったのに、なぜ負債?——まだ「商品を渡す義務」が残っているからです。義務を果たせば売上に変わる、いわば将来の稼ぎの予約席でもあります。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
写真の右下——純資産の部
右下は純資産の部。自前のお金には、出どころが2つあります。
株主が出したお金——資本金と資本剰余金。そして、会社が稼いで蓄えたお金——利益剰余金です。創業からの利益の蓄積で、「内部留保」とも呼ばれます。細かな科目(自己株式や、保有株の含み損益など)は、ここでも辞書行きで十分です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
利益剰余金が厚い会社は、過去の稼ぎの蓄えが厚い会社です。
負債は不況の年でも返済を待ってくれませんが、純資産に返す期限はありません。つまり純資産の厚みは、悪い年を耐え抜く体力。赤字が1年出ただけでは、屋台骨は揺らぎにくいのです。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
体力を1つの数字で測る
骨格がそろいました。資産・負債・純資産——この3つの数字から、会社の体力をたった1つの割合で測る物差しが作れます。
投資家がBSでまず見る、その物差しとは?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
自己資本比率=純資産÷総資産×100
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
自己資本比率——全財産のうち、返さなくてよい自前のお金が占める割合です。
ヤマセ製作所なら、純資産400億円÷総資産1,000億円×100=40%。事業の元手の4割が、返済期限のないお金で支えられている状態です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
この割合が変わると、会社の景色はどう変わるのでしょうか。
総資産がまったく同じ1,000億円の、もう1社を隣に並べてみます。めくる前に予想してみてください——純資産が150億円しかない会社の写真は、どう見えるでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
ヤマセ製作所(自己資本比率40%)
総資産1,000億円のうち、純資産400億円・負債600億円。元手の4割が返済不要のお金で、稼ぎが細る年にも粘りが利きやすい体つき。
クジラ堂(自己資本比率15%)
総資産1,000億円のうち、純資産150億円・負債850億円。事業の大半を借入が支え、返済と利息の重みが常にかかる。逆風の年に選べる手が少なくなりやすい。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
2社とも、写真の「大きさ」(総資産1,000億円)は同じ。でも中身の配合がまるで違います(どちらも説明のための架空例です)。
倒産は、ある日突然すべてが始まるわけではありません。多くの場合、写真の右側の配合が年々借入へ傾いていく——その変化は、決算のたびに公開されています。粉飾や急変まですべて見抜けるわけではない。それでも、写真を読む人には体力の変化が見えるのです。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
では、何%あれば安心なのでしょうか。
一般に、20%を下回ると借入への依存が重め、30%以上がひとつの目安、50%以上なら厚め——と読まれることが多い水準です。ただし、これは法律で決まった水準ではなく、経験的な目安にすぎません。では、日本の会社ぜんたいでは、実際どれくらいなのでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
日本の企業の自己資本比率(全産業・金融業と保険業を除く・2024年度)
42.1%
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
全体では40%あまり。ただしこの数字は、業種で大きく割れます。
製造業は50%前後と厚めな一方、金融業・保険業は5%前後がふつう(預金や保険料など、人から預かったお金を運用する商売の構造上、そうなります)。同じ物差しを全業種に当てない——高峰の他の物差しと、同じ作法です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
だから、「比率が低い=すぐ危ない」と短絡はできません。
前受金で先にお金が入る商売や、金融業のように構造的に低い業種もあります。数字は判定ではなく、「なぜこの水準なのか」という問いの入口——同じ業種の中で比べて、はじめて意味を持ちます。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
長期の体力と、今月の支払い
ここで、鋭い人はこう思うかもしれません。「自己資本比率が高ければ、支払いに困ることはないの?」
実は、それは別の話です。純資産が厚くても、その多くが工場や土地の形なら、近い将来の支払いに使える現金は薄いことがありえます。そこで、左右の「1年の線」どうしを見比べる物差しの出番です。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
流動比率——1年以内に現金になる持ち物が、1年以内に返す借金の何倍あるか。100%を大きく下回ると、近い将来の支払いが綱渡りになりやすく、一般に高いほど短期の余裕があるとされます(ここでも業種で「ふつう」は異なります)。
自己資本比率は長期の体力、流動比率は短期の息つぎ。写真1枚から、2つの安全性が測れました。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
ところで——ふやしの山脈で「時価総額」という言葉に出会った人もいるはずです。時価総額(株価×発行株数)は、会社まるごとの値段でした。
純資産も「会社の正味の財産」。この2つは、同じものなのでしょうか?
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
純資産(帳簿の値・過去の蓄積)
会計帳簿の上の金額。株主のお金と過去の稼ぎの蓄積で、決算のたびに更新される。会社をたたんで借金を返したあとに残る財産(解散価値)に相当するとされる。
時価総額(市場の値・将来への期待)
市場の投資家が、その会社の将来の稼ぐ力に値付けした金額。株価とともに毎日動く。過去の蓄積ではなく、これからへの期待を映す。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
この2つの比率こそ、ふやしの山脈で出会った PBR(時価総額÷純資産)です——帳簿の蓄積の何倍の値段が付いているか。
同じ「純資産」を使っても、自己資本比率は内側から見た安全性、PBRは外側から見た株価の水準。使う場面のまったく違う、別の物差しです。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
最後に、紛らわしい言葉を一列に整理しておきます。
総資産=全財産(写真の左側の合計)。純資産=総資産から負債を引いた正味(右下)。自己資本=純資産とほぼ同じ意味で使われる言葉です(厳密には一部の項目を除きます)。ちなみに「自己資産」は正式な会計用語ではなく、利益剰余金の「剰余」を「余剰」と書くのも、よくある間違いです。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
冒頭の約束を、思い出してください。BSを読めても、次の株価は当てられません。
それでも、値打ちは確かにあります。倒産のニュースに驚く側から、体力の変化を写真で読める側へ。当てることではなく、読めること——それが、この霧の晴らし方です。
この先の道は2本。写真(BS)と動画(PL)だけでは見えない「お金の血流」を追う道は「CF計算書と黒字倒産の謎」へ。物差しを組み合わせて立体的に読む術は「指標の組み合わせ方」で待っています。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
今回のまとめ
- BSは決算日時点の持ち物と借金の写真。左=資産(使いみち)、右=負債+純資産(集め方)で必ず一致。
- 負債は返す期限のあるお金、純資産は返す期限のないお金。純資産の厚み=悪い年を耐える体力。
- 自己資本比率(純資産÷総資産)は長期の体力。目安は一般に30%以上とされるが、業種で「ふつう」は異なる。
- 流動比率(流動資産÷流動負債)は短期の支払い余力の物差し。
- 利益剰余金は稼ぎの記録であって現金の山ではない。数字は判定でなく「なぜ?」の入口。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
今日からできること
- 知っている会社を1社選び、EDINETや会社のIRページで貸借対照表を開いてみる。
- 「総資産」と「純資産」の2つの数字を見つけ、純資産÷総資産×100を計算してみる。
- 出てきた比率を、同じ業種の他社1〜2社と並べて「なぜこの水準?」と問いを1つ立てる。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
この学びを使う前に
※ 本記事で言及するサービス・商品名は説明のための例示であり、特定の商品・事業者を推奨するものではありません。
※ 本記事のシミュレーションや過去のデータは、将来の結果を保証するものではありません。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。
本コンテンツは一般的な金融知識の学習用です。将来の成果を保証するものではありません。